コンセプションケア協会は、これからはじまる未来のために役に立つ情報やサービスを提供します!

一般社団法人コンセプションケア協会

世界で精子数がどんどん減少している!

欧米からのデータになりますが、世界の男性の精子数は過去40年間に50-60%減少しているそうです。このことは、少子化が進む我が国、日本にとってもおおきな問題です。精子は生涯を通じて、精子を作る元の細胞、精子幹細胞(胚細胞)から新しく産生されます。しかし、さまざまな環境要因によって、精子もまた、ダメージを受け、老化することがわかってきています。最も大きな要因は加齢ですが、生活習慣も大切です。とくに喫煙は精子形成に大きなダメージを与えます。また、肥満、食事、 睡眠、運動不足、生活環境や環境ホルモンなどさまざまな要因があげられます。

図:1970年から2010年までに減少する精子数
Hum Repod Update 2017;23:646-659. より引用

加齢と環境による精子への影響
精巣の体積は75歳をこえると、18歳の男性と比較し約3割ほど小さくなります。つまり、老化により、精巣を作る工事の規模が縮小していくわけです。顕微鏡で観察する組織形態学的な検討では、少し難しい話になりますが、年齢に伴い精子を作る精細管が減少し、精子幹細胞とセルトリ細胞の数が減少します。個人差はあるものの、年齢に伴いライディッヒ細胞も減少します。

  • 精細管:精子を産生する場所
  • 精子幹細胞:精子もとになる細胞
  • セルトリ細胞:精子形成で細胞に栄養を与える細胞
  • ライディッヒ細胞:男性ホルモンであるテストステロンを分泌する細胞

つまり、精子を形成するのに必要な燃料がへり、精子を生成する機械も動かなくなってきます。
精巣が小さくなるにともない、精液量、総精子数、運動精子数、正常形態精子率(奇形のない精子がどのくらいいるか)などは、35歳くらいを境にいずれも減少します。精子のとっての35歳がひとつの曲がり角です。
精子の老化のメカニズムとして、加齢によって増加する酸化ストレスにより、精子のDNA にダメージが溜まっていくことが推測されています。実際、精子の DNA 断片化(DNAがダメージを受け、ばらばらになり)が増加することにより受精率が低下することや、不妊治療による成功率への悪影響をがわかっています。また、精液は主に精嚢腺(精液の貯蔵庫)から分泌されますが、加齢によって精嚢容積が減少します。つまり、工場が縮小され稼働率が減少する上に、製品(精子)を貯蔵する倉庫もなくなっていくわけです。実は、喫煙や肥満、睡眠、運動不足などは酸化ストレスを起こし、精子の老化を早めるのです!そして精巣の老化は、男性の活力のもと、テストステロンを減少させてしまいます。

井手 久満 (いで ひさみつ)
代表理事

獨協医科大学埼玉医療センター教授、低侵襲治療センター長
宮崎大学医学部、 国立がんセンター、UCLAハワードヒューズ研究所、帝京大学を経て2020年4月より現職

ブログ一覧